松下幸之助

雑談で社員を育てる


社員の育て方にはいろいろな方法があると思いますが、雑談というのも一つの方法のようです。

松下幸之助の側近だった江口克彦さんは、松下と雑談をする時間が多かったそうで、その雑談で松下幸之助に雑談で育てられたとおっしゃっています。

「松下さんは、私とずいぶん雑談をしてくれました。この前、テレビを観てたら、こんなことを言う人がいた。わしは、いままで、あまり気にしてなかったんやけど、えらいいい話をする。たいしたもんや」と言う。それは、その人の話をすることによって、私に一つの教育をしていたのでしょう。そのようになれ、ということです。(江口克彦著「松下幸之助はなぜ成功したのか」東洋経済新報社)」

具体的な内容として、こういうことを挙げています。

「あるいは、「けじめをつける。基本が大事だと、ある落語家が話していたけど、さすが落語界で第一人者として活躍しておる人は、それなりに心掛けというか、考えが違うわね。実に立派な人やな」などと言う。それは、私に、けじめをつけることの大切さ、基本を大事にすることの大切さを、何気なく、さらりと雑談で教えてくれていたのでしょう。(同著)」

松下自身に社員を育てようと思いがあったのも大事ですが、やはり、雑談相手の江口さん自身が育とう、成長しようという思いがあったのも大事なことです。

聞き手にその意欲がなければ、どんなことを言っても、馬の耳に念仏ですからね。

さらにポイントとしては「何気なく、さらりと」と言うところですね。説教じみて言ったり、押し付けがましく言ったりしないということです。

説教じみたり押し付けがましくなったら、雑談とは言え聞く耳を持って貰えなくなるので、逆効果ですからね。

説教じみたり押し付けがましくなるのは、育てようという思いや早く育って欲しいという思いを持ってしまっているからかも知れません。

中小企業は基本的に人手が足りませんし、そもそも優秀な人が入社してくれる訳ではありませんので、社員に早く育って欲しいという経営者の思いはよくわかります。

でも、社員を育てるためにはその思いはグッと抑える必要もあります。

松下もこう言っています。

「部下を育てるというのは、うん、それは根気がいるわね。(同著)」

部下を育てるには、早い成長を求めてしまう気持ちを抑えて、じっくりと時間をかけるという心掛けが必要なんですね。

急いては事を仕損じるという言葉もあります。慌てずじっくりと社員を育てていきましょう。