中小企業の経営者にとって、特に情報は重要なものです。変化の激しい時代ですから誤った情報をもとに経営判断をしては会社の経営が傾いてしまうからです。
経営者が情報を入手する方法はいくつかあると思うのですが、その一つとして社員からの報告があります。
社員は経営者よりも現場に近いので、社員からの情報で実態がよくわかります。
でも、特に中小企業においては社員は経営者に話しかけづらいものなので、社員からうまく情報を引き出すのは難しいかも知れません。
では、どうすれば社員からうまく情報を引き出せるか?
松下幸之助はこう言っています。
「部下の話を聞く時に、心がけないといかんことは、部下の話の内容を評価して、良いとか悪いとか言ったらあかん、ということやな。部下が責任者と話をする、提案を持ってきてくれる、その誠意と努力と勇気を褒めんといかんね(松下幸之助はなぜ成功したのか、江口克彦著、東洋経済新報社)」
江口さんご自身の体験として、江口さんが松下幸之助に話をしたときに、一度も「それはダメだ」とか「つまらない」ということを言われたことがないそうです。
どんな話であっても、「いい意見やな」とか「そういう考え方も出来るな」と感心した様子で聞いてくれたそうです。
松下幸之助はそれ以外の社員からの報告に対しても、同じようにしていたようです。
社員からすれば、あの松下幸之助が感心して話を聞いてくれる訳ですから、どんな情報でも松下幸之助に持っていこうと思うようになりますよね。
松下は情報が集まりやすいようにふるまうことによって、松下幸之助は情報を集めていたのです。
とは言え、松下にもたらされる情報が必ずしもいいものであるはずがありません。
ですから、社員からの情報や提案は、何回かに一回いいものがあれば、それで十分、と考えておくといい、と松下幸之助は言っています。
話を整理すると、中小企業の経営者が社員から情報をうまく引き出すには、社員の話そのものに価値を求めず、社員が報告をしてきてくれたこと自体に価値を求めるということです。
松下の言葉を借りるなら、その話を持ってきてくれた人に対する「熱意」に関心を持つ、ということです。そして、情報を持ってきてくれたことに対して感謝するのです。
社員から情報をうまく引き出して、会社経営に活かしてください。