松下幸之助

手柄を社員に取らせる


松下幸之助の人心掌握力にはホントに脱帽させられます。

松下幸之助は経営の神様であっただけではなく、人心掌握の神様でもあったんです。というか、経営の神様だから人心掌握の神様でもあったんでしょうね、きっと。人の心を掴めなかったら経営もうまくいきませんから。

どうしてそんなことを思ったかというと、こんなエピソードを知ったからです。

「その午後、たまたま松下電器の某役員がやってきました。そして、なんと、先ほど、松下さんが、「これ、やったらどうかな。」と言っていたことと、ほとんど同じことを、その幹部が提案したのです。(中略)

じっと聞いていた松下さんは、当然、「それは自分も考えていたことだ」と言うのだろうと、私は思っていました。

ところが、身を乗り出して、その役員の話を聞き、聞き終わると、「うん、その、きみの提案、いい考えや。それ、やろう。きみの考えたこと、すぐにやろう。うん、ええなあ」と言う。自分も考えていた、ということはひと言も言いませんでした松下幸之助はなぜ成功したのか、江口克彦著、東洋経済新報社)」

さらに松下幸之助は、その人を最高責任者に任命して、進めるように指示したのです。

すごくないですか??

自分が考えていたことと同じようなことを社員が提案してきたら、普通の人なら、自分も同じことを考えていたとその社員に伝えるでしょう。

人が自分と同じような考え方だったことを知ったら、たとえ相手が誰であってもうれしいですから、ましてや自分の会社の社員が自分と同じ考えを持ってくれたらうれしくて仕方がなくなりますよね。だから、つい、自分も同じ考えだと伝えてしまうと思います。

でも、松下幸之助はそんなことは一切しなかったのですよね。それがすごいところです。

では、なんで、そういうことをしたんだと思います?

それは本人にやる気を出させるためです。

自分の提案が受け入れられることは社員にとってうれしいことです。同じことを社長も考えていたとなると、社員にとってもうれしいことでしょう。

でも、自分が提案したことが社長の考えだと一緒だと分かったら、それは自分の提案であると同時に、社長のアイデアでもある訳ですよね。

その反面、たとえ社長と同じ考えだったとしても、そのことを知らされずに社員の提案が受け入れたらどうでしょうか。

社員からすれば、社員の独自の提案が認められたことになりますよね。

その方が、たとえ同じアイデアでも社長と一緒だったと知ってしまうよりも、自分の独自の提案が認められた方がやる気は高まりますよね?そうなれば、おのずといい結果も生まれるじゃないですか。

なので、よりいい結果を求めるのであれば、社員が自分と同じような考えを提案してきたとしても、同じ考えだというのをグッと堪えて、社員の独自の提案だと受け入れてみてください。