知っている人も多いと思いますが、安倍首相は憲法改正に意欲を示しています。
日本経済新聞社とテレビ東京による8月30日~9月1日の世論調査でも憲法改正を議論すべきだという意見が70%を超えています。
私も昨今の国際情勢を鑑みると憲法改正が必要かなと考えていたのですが、実はその必要がないんじゃないかと思うようになってきました。
憲法そのものを改正しなくても、憲法解釈を変えれば、それで済むんじゃないかと思うようになったからです。
きっかけを与えてくれたのがこの本↓です。
憲法学の病(篠田英明著、新潮新書)
国際政治学者である篠田英明先生が、国際法の観点から、憲法学者の憲法解釈について分析している本です。
篠田先生は、日本の憲法学者は国際法との関係を全く無視して、独自の(ガラパゴス的な見地の)憲法解釈をしていると痛烈に憲法学者を批判しています。
日本の憲法学者の独自の憲法解釈が日本に浸透しているから、日本は憲法九条のお陰で日本は平和なんだとか、あるいは日本国憲法は戦争を放棄している、自衛隊は憲法違反だと考える人が出てきてしまうのだと思いました。
でも、国際法の観点から日本国憲法を解釈すると、全く違うんだそうです。
どういうことかというと、例えば、この一文に集約されています。
「戦後の日本国憲法は、国際法を遵守し、改めて戦争を否定する宣言をした。それが憲法9条1項である。つまり、国際法を遵守する、とあらためて宣言したのが、憲法9条である(同著)」
さらにちょっと補足するとこうなります。
⓵1928年の不戦条約1条及び2条において戦争が放棄されていて、その後の1945年の国連憲章2条4項においても同じように戦争が放棄されている。
⓶日本国憲法は1946年に作られてものだから、当然にそれまでに存在していた国際法を前提にして作られている。
そもそも国際法で戦争が否定されていて、日本もそれに従っているだけ、ということになります。
日本は加盟していた国際連盟を1933年に脱退して、要は国際法には従いませんよ、という意思表示をしてしまいました。その結果と言い切っていいかはわかりませんが、結果的にアメリカと戦争をすることになりました。
日本としてその反省も踏まえ、アメリカとしては日本に戦争をさせないようにするため、憲法において国際法に則るようにしました。
他方で国際法上は自衛権の行使は違法とされていないので、自衛権の行使のための軍隊は当然に国際法上違法ではありません。
となると、自衛隊も日本国憲法上違法ではないことになります。
結局、自衛隊を縛っているのは日本国憲法なのではなくて、日本の憲法学者による憲法解釈だということになります。
だから、実は憲法を改正する必要はなくて、国際法に則って日本国憲法を解釈するようにして、それを広めていけばそれでいいんじゃないかと思えます。
ただ、このやり方だと時間がかかるだろうし、反対も多いだろうから、憲法を改正してしまって、解釈の余地をなくすのが早いのかな。
日本国憲法に興味がある方にはぜひ読んで欲しい本です。